先日、乳癌治療中の友人と会って話しました。いつも前向きだし、情報収集能力もある人ですが、自分が病気になってみて分かる戸惑いや、不安に押しつぶされそうになることがあると正直に話してくれました。「こんなに治療費がかかるなんて思ってなかった。え~?!っていうくらいどんどんお金が出ていくね」。「乳癌は啓蒙のための講演会なんかもよくあるけど、そんなの行ったことなかったのよ。こうなるまでは」。「同じ病気を持っている人と話をして、具体的なことが知りたくなるのは、自分がそうなってからだよね」。だから、乳癌と診断されたばかりの人に、少し前を歩く先輩として自分が何か出来ることはないかと考えているという友人の言葉に、思い出したのがシャノン・カーティスさんの歌う “i know i know わかるよ、私もそうだ(だった)から” です。YouTubeで学ぶ英語、3回目は、この曲を使って勉強していきましょう。
[youtube id=”sVYh6UbbbO8″ align=”center” mode=”normal” autoplay=”no” maxwidth=”600″ parameters=”rel=0″]
映像を見ていただいたら、「あなたはひとりじゃない」と伝えるために、いろんな人たちが彼女の曲の流れる中、自分の抱えている問題をシェアしていることが分かります。シャノンさんは、自身のサイトの中で、 “I know, I know; I’ve been there, too. わかるよ、私もそうだ(だった)から” がこの曲のメッセージだと書いています。どんな苦境に陥ったことがあるか、どんな経験を経てきたか、今どんな問題に直面しているのかを話すのは勇気がいる。でも、同じような経験をまさに今、この瞬間にしている人に “You are not alone.” と伝えるために、この曲を書き、この i know i know.me プロジェクトを始めたのです。自分の心の柔らかいところを見せて、同じ苦しみを味わっている人に “I know, I know; I’ve been there, too.”という言葉を届けたいからです。
紙に書かれた言葉を見ていく前に、タイトルについてまず考えてみたいのです。歌のタイトルは小文字のi を使っていますが、自分のことよりも相手のことを思って発する言葉として、普通は I と大文字で綴ることが多い「私」という言葉を i にされたのではないかと思っています。英語での日常会話で I know は驚くほどよく出てくる表現のひとつです。
A: It’s very hot today. 今日はすごく暑いね。
B: I know. そうだねえ。
Exactly や Definitely、 You can say that againのような感じで、相槌として、「その通り」という意味に使う I knowです。
もうひとつの使い方として、「西の魔女が死んだ」という梨木香歩さんの小説に出てくるお祖母さんと孫娘の会話でこういうものがありました。
まい:「おばあちゃん、大好き」
お祖母さん:「アイ ノウ」
お祖母さんはイギリスの人という設定です。この表現は、「よくわかっていますよ。私もそうよ」という温かい言葉。そして、こちらの使い方が、シャノンさんの i know なのだと思うのです。
YouTubeの映像17秒あたりで出てくる女性。 My son has been a drug addict since he was 12. と書いています。
「私の息子は12歳から麻薬常用者です」 addict は「中毒者 、常用者」という人を表す名詞で、addiction になると「常用すること、中毒、熱中すること」という事柄を表す名詞になります。
21秒あたりで出てくる男性。Bullied and Depressed. I had planned my suicide. と書きました。
bully は「いじめる」という他動詞ですから、受動態にして「 I was bullied いじめられました」 Depress は「意気消沈させる、憂鬱にする」という他動詞ですから、こちらも受動態にして「I was depressed 憂鬱でした。落ち込みました」という意味になります。それを略して「Bullied and Depressed いじめられて落ち込んでた」と解釈できます。そして、過去完了形で「 had planned 計画したこともあった」と書かれています。「my suicide 自死をもくろんだこともあった」けれど、過去完了形ですから、現在のこととは違うということが分かります。
28秒目に出てくる彼女は、今まさに感じていることとして、こう書きました。 I feel torn between my successful career and being an “always present ” mother……
tornは、「tear 引き裂く」という動詞の過去分詞ですから、これも受動態で、「I feel torn =引き裂かれる気がする」となります。between A and B で、A とBとの間で、という表現ですから、全体を訳すと、「A=仕事で成功することと、B=いつも(子供のそばに)いる母親であることの間で、引き裂かれる気がする、心は千々に乱れている」となります。
1分20秒くらいに出てくる女性はこう書いています。 I was in an abusive relationship for 2 years because I was too scared and ashamed to ask for HELP.
abusive は、身体的か精神的かを問わず、虐待的な、という意味の形容詞です。つまり、彼女は相手から虐待的な扱いを受ける関係を2年続けてしまった。その理由は、too scared to ask for help / too ashamed to ask for helpだったから。
too~to は、~過ぎて~出来ないという表現でしたね。「too scared to ask for help 怯え過ぎて、助けを求められなかった/ too ashamed to ask for help 恥ずかしすぎて、助けを求められなかった」と訳せます。
1分49秒あたりに出てくる男性は、 P.T.S.D Clinical Depression Bipolar Spectrum Disorder # HOLDFAST と書きました。
P.T.S.Dは、日本語の中でも使われるようになった言葉ですね。post traumatic stress disorder 心的外傷後ストレス障害のこと。 Clinical Depressionは、うつ病(臨床的処置が必要なほど重篤な抑うつ)、Bipolar Spectrum Disorder は、双極スペクトラム障害のことです。英語での日常会話の中では、「Depression うつ」、「Bipolar 躁うつ」、という言葉をよく耳にします。
この男性は、紙にも、自分の指にも HOLDFAST と書いています。名詞として考えると、「しっかりつかむこと」、とか留め金や釘のように「しっかり押さえるもの」という意味になります。Hold Fast と分けて考えると、「しっかりとHold しろ」、「ちゃんとつかめ」、という文章になります。
動画の中には、シャノンさん本人も自分の経験をこのように紙に書いて登場しています。 My first marriage ended in divorce.
自動詞 end に in +~名詞~を付けて、「結局~に終わる」という表現になります。 「私の最初の結婚は離婚に終わった」という訳になります。
シャノン・カーティスさんのページはこちらです。http://iknowiknow.me/
YouTubeで学ぶ英語: 関連記事:
- YouTubeで学ぶ英語:(108)これからもYouTubeで学習を続けてください 2021年12月25日
- YouTubeで学ぶ英語:(107)インドネシア・ジャワ島のスメル火山が噴火 2021年12月11日
- YouTubeで学ぶ英語:(106)性被害告発後の中国テニス選手、真実はどこに 2021年11月27日
<有料会員向けコンテンツ>
この動画に勇気をもって登場している人たち、本当は全てご紹介したかったくらい、どの人も素敵です。紙に書いてくれているわけですから、ぜひポーズボタンを使ってひとつずつゆっくり読んでみて下さい。有料会員の方は、シャノンさんがこの歌とプロジェクトに関して話している部分の解説を読んでいただけます。また、i know i know の歌詞と私訳も載せていますので、お楽しみください。(松中みどり)
[youtube id=”sVYh6UbbbO8?start=215&end=264&autohide=0″ align=”center” mode=”normal” autoplay=”no” maxwidth=”600″ parameters=”rel=0″]